a)宮城県総務部危機対策課実態調査
調査対象:宮城県総務部危機対策課
実施日時:平成15年10月14日(火)9時30分〜11時30分
 調査結果
?)宮城県北部連続地震の全体像について
 宮城県災害復旧対策本部事務局の「宮城県北部連続地震による被害について(確定報)」(平成16年3月12日)(http://www.pref.miyagi.jp/kikitaisaku/saigai/0726saigai40.pdf)によれば、宮城県北部連続地震の概要は、以下の通りである。

 1 地震の概況(震度6弱以上)
(1) 1回目7月26日0時13分発生(前震)
規模マグニチュード5.6
1 各地の震度震度6弱鳴瀬町,矢本町
震度5強鹿島台町,南郷町
震度5弱河南町,松山町,石巻市,大郷町,田尻町,涌谷町
(2) 2回目7月26日7時13分発生(本震)
1規模マグニチュード6.4
2 各地の震度震度6強南郷町,鳴瀬町,矢本町
震度6弱鹿島台町,河南町,小牛田町,桃生町,涌谷町
震度5強古川市,松山町,石巻市,田尻町,米山町
震度5弱一迫町,河北町,金成町,高清水町,三本木町,志波姫町,瀬峰町,
仙台市,大郷町,迫町
(3) 3回目7月26日16時56分発生(余震)
1規模マグニチュード5.5
2各地の震度震度6弱河南町
震度5強南郷町,涌谷町
震度5弱桃生町

 2被害の状況
(1) 人的被害1
・死者・行方不明者なし
・重傷者51名(10市町)
・軽傷者624名(17市町)
合計675名
(2) 住家等
棟数世帯数市町村数
全壊1,276棟1,046世帯8町
半壊3,809棟3,200世帯10町一部破損10,975棟8,821世帯23市町
合計16,060棟13,067世帯
(3) 火災発生状況3
・3件(3町) 加美町,涌谷町,矢本町
(4) 主要施設被害4
・女川原子力発電所,石油コンビナート等異常なし
・広域水道7月29日16時45分復旧済。
(5) 生活関連被害
1ライフライン施設関係
・水道断水戸数延べ15,449戸→ 7月30日4時復旧済。
・電気停電戸数延べ115,425戸→ 7月26日23時15分復旧済。
2交通関係
・新幹線7月26日10時00分注意運転にて運行再開→ 平常運行
・在来線JR各線一部区間及び全線において,運転見合わせ,一部運休と遅れあり→ 8月23日全線平常運行
3道路交通規制(大雨による規制含む)
県管理道路の全面通行止め26箇所規制
(一般国道箇所,主要地方道箇所,一般県道箇所) 4 9 13→ 3箇所継続規制中
(主要地方道箇所,一般県道箇所) 1 2
 3 被害額の状況(被害額には一般住宅を除く)
1土木施設被害516箇所14,523百万円
2産業関係被害3,507箇所11,237百万円
3文教施設被害268箇所1,753百万円
4保健福祉関係被害79箇所3,583百万円
5その他公共施設被害58箇所971百万円
合計4,428箇所32,067百万円

4 避難等の状況
避難所の状況〔公の施設〕最大時7月26日3,133人(8町77箇所)
→ 9月5日避難所〔公の施設〕への避難者なし

5 災害対策本部等設置状況
(1)宮城県7月26日0時13分宮城県災害対策本部設置(8月6日0時00分廃止) 18月6日0時00分宮城県災害復旧対策本部設置
(2)市町村災害対策本部設置市町村28, 廃止市町村28, 継続中0
  災害復旧対策本部設置市町村6(松島町,鹿島台町,南郷町,矢本町,河南町,鳴瀬町)
警戒本部設置市町村39, 廃止市町村39, 継続中0


?)宮城県の災害対応と情報伝達について(以下、インタビュー調査の要約)
・5月の地震については、被害が少なかった割には、情報の伝達の困難が大きかった。7月の地震については、被害が大きかったが、必要な情報の収集については困難がほとんどなかった。
・その原因としては、5月の地震は広域にわたって夕方6時という通勤・通学時間帯に発生したため、被害情報の入手や安否確認のための通話が集中し、宮城県内広域で輻輳が起き、情報収集や情報伝達が難しかった。それに対して、7月の地震は、局地的であり被害地域は限定されており、また、発生時間は深夜0時、朝7時と住民が家にいる時間に発生したため、被害情報の入手や安否確認のための通話の集中による輻輳は、被災地となった地域では相当発生したと思われるが、宮城県としては、その状況を把握していない。それ以外の仙台市も含む宮城県内ではほとんど起こらなかったということがあげられる。

図2(a)(?)県と関係機関における災害情報の伝達ルート
(災害時における情報通信システムの利用に関する検討会『第二次報告書』 [http://www.ttb.go.jp/saigai/houkoku/index2.html])

・県庁と市町村との間の情報伝達については、防災無線を介した電話とFAXによる情報のやり取りについては支障がなかったが、同一管内の職員招集や被害情報収集の際の固定電話や携帯電話の利用は支障があった。
・県庁と各地方県事務所の間のデジタル・データ情報伝達は、総合防災情報システム「宮城ハイパーウェッブ(LG1:光ファイバー回線)」を利用しており、市町村から衛星回線を介した防災FAXで上ってくる情報を地方機関が集計して、メールで県災害対策本部に伝達していた。5月の地震では、その際に、市町村からの防災FAX回線に通信が集中しボトルネック現象による輻輳が起こった。そこで、それを教訓として、5月の地震以後、ボトルネックが起こらないように、FAXでの通信が集中した時に、県庁と各地方機関に設置されている防災無線につながる内線電話は、衛星系と地上系との間で自動的に空いている方に回線が変わるようにした。また、(東北総合通信局が設置した「災害時における情報通信システムの利用に関する検討会」の報告に基づいて:筆者補足)NTT等の情報通信関連業者が、通信回線の輻輳対策を行ったので、7月の地震では、輻輳が起こりにくかったと考えられる。
・5月の地震で、県の情報伝達の悪さが、情報通信基盤における輻輳問題と職員の情報伝達に対する認識の不十分さという2つの面から専門家やマスコミ等に指摘された。
・災害拠点病院と各市町村の消防本部との間は、防災無線が整備されていないので、無線での連絡ができず、携帯電話での通話に頼らざるをえないことが怪我人の搬送上問題となった。
・5月の地震では、火災発生時に、携帯電話から119番をかけても消防本部に通じなかった。それで、公衆電話から119番通報を行おうとしたが、公衆電話がなかなか見つからなくて通報が困難をきわめた。
・5月の地震では、災害時優先電話でさえも輻輳した。原因は、高速道路上で渋滞が起こるのと同じく(高速道路に入る料金所で渋滞が起こるのとは異なり)、通信回線上の通話が回線の容量を超えていたため、通話ができなかったことがあげられる。

図2(a)(?)総合防災情報システム(「MIDORI」)
Miyagi Integrated Disaster prevention Online system for Rapid and accurate Information
(宮城県総務部危機対策課ホームページ
http://www.pref.miyagi.jp/kikitaisaku/midori.htm])

・総合防災情報システム(「MIDORI」)が平成5年4月から運用されており、災害時に、宮城県庁内の関係課と仙台管区気象台、陸上自衛隊は、通信情報端末に入力して、県の災害対策本部に情報を伝達することができる仕組みになっている。市町村から各地方県事務所との間は、防災無線FAXを使用して情報伝達を行っているが、今回の地震では、地方支部から県庁の間では、「宮城ハイパーウェッブ」の光ファイバー回線経由でメールも使用された。地方支部は、住家被害や死傷者数などの数値情報をエクセルベースのフォーマットに書き込みメールに添付して送り、県災害対策本部での各地の被害状況などの集計が効率よく行うことができた。しかし、その他の自由記述形式の文字情報の処理には時間がかかったので、文字情報をどのように定型化して入力するかが、今後の課題である。
・県の土木部門の職員が、カメラ付携帯電話で被害状況を撮った写真をメールで添付して、県の災害対策本部に被害状況の画像を伝達するということが、今回の地震で行われた。しかし、現場の対応に追われている市町村にそれを求めるのは、難しいと思われるし、実際に、そうした形で画像が大量に県の災害対策本部に届いた場合、情報の整理が困難を極めると思われる。
・宮城県は防災ヘリコプターをもっているが、また、7月の地震では、ヘリコプターは整備中で運行できず、消防庁を通じて札幌市と茨城県へ防災ヘリコプターの出動を要請し、そのヘリコプターのテレビカメラを使って現地の被害映像を災害対策本部で収集し、対応に使用することが出来た。5月の地震については、仙台市消防局の消防ヘリコプターが使えたので、現地の被害映像を収集することができた。
・自衛隊には、総合防災情報システムの端末が入っており、災害時にその端末を通じて情報の伝達が行われる。電力会社や電信電話会社からは電話を通じて被害・復旧情報が入ってくるが、ガス会社や交通機関などからは、情報は入ってこない。
・警察からは死者数についての情報が入るが、市町村の消防本部からのように負傷者についての情報は入らない。
・5月の地震の時には、発災後ホームページを立ち上げて被害情報等を発信したのがかなり後なってからだった。ホームページを立ち上げると即座に大量のアクセスがあった。
?)今後の災害に対する情報伝達に関する改善点について
・現在、総合防災情報システムの再構築を計画中である。メインの回線は、光ファイバーで、バックアップは無線(地上系64kbpsか128kbps、衛星系は通信方式によって通信速度が異なる)を使う。市町村への回線は、ADSLを使うことを考えている。
・業者に任せるのではなく、宮城県が主体的に安定した総合防災情報システムの情報通信基盤をいかに構築し、セキュリティを保持した上で日常的に利用できるかが、課題である。GISの導入を予定している。
・現在、県の災害対策本部が置かれる部屋には、10年前に設置した総合防災情報システムの防災専用端末が置かれており、ほとんど使われずに仏壇化している。
 これから開発する防災情報システムでは、汎用マシンを端末として使い、システムの更新を容易にしようと考えている。防災担当の職員が、職場に来なくても情報の入手と伝達ができ、システムのメンテナンスもできるようにしようと考えている。しかし、セキュリティを優先してしまうとリモートでのメンテナンスに躊躇せざるを得ない。システムの更新は、平成16・17年度を予定している。
・新しいシステムでは、県下68市町村の震度情報をメールで防災担当職員の携帯電話とポケットベルに送り、その後、音声で知らせるようにしようと考えている。